モドル
みんながカウンターに腰掛けると、バルソムはゆっくりと喋り始めた。

バルソム
「もう話してもよかろう。みなも薄々感づいていたとは思うが、私は昔、エルバード王家に近衛兵として仕えていたことがあったのだ。その頃のフラワルド男爵は留学から戻ってきたばかりで、王からの期待もなみなみならぬものがあった。ところが、ある晩のこと、俺たちがいつものように見回りをしていると、王の書斎より抜け出してくる影を見つけた。不審に思った俺たちは、当然後を追ったのだが、町まで来て男爵の屋敷の手前で見失ってしまった。」

タムリン
「ということは…その侵入者はフラワルド男爵ってこと?」

バルソム
「いや、俺たちもまさかとは思ってみたが、それだけで男爵を疑うわけにもいかないので尋ねてみることにしたのだ。それが間違いの元だった。俺たちの話を聞いた男爵は、憲兵に命じると、俺たちを捕えさせ、偽の罪をきせて国から追放した。それ以来、奴は王に取り入って国政をほしいままにしているのだ。エルバードを救うためには、奴を殺すことがまず先決だ。俺はそのためにここまできたのだ。これ以上、行動を共にしては、お前たちに迷惑がかかる。男爵殺しの汚名をかぶるのは一人で充分だ。」

アトルシャン
「バルソムさん。そんな話を聞いて黙って貴方を一人で行かせるわけにはいきません。たとえ、お尋ね者になろうとも俺たちも共に戦いましょう。」

バギン
「なぁに、男爵を倒し、王にご説明申し上げれば、きっと理解していただけることじゃろう。」

アトルシャンが、バルソムの手を握った。
四人の絆は強い。

バルソム
「フラワルドの奴、最近では町の南西にある自分の屋敷から一歩も外には出ないらしい。」

バギン
「警護の兵士の数もかなりのようじゃ。気を引き締めてかからぬと、返り討ちにあいかねぬ。」


【フラワルドの屋敷】
兵士
「貴様ら、はむかうつもりだな。切り捨ててくれる!」

兵士
「問答無用。死ね!」

兵士
「あん?貴様ら!どこから入ってきた!」

兵士
「これ以上、先には行かせぬ!」

兵士
「曲者です!男爵様、お逃げください。」


フラワルド
「貴様ら!何者だ。私をフラワルド男爵と知ってのことか。」

バルソム
「フラワルド!俺を覚えているか。いや、もうそんなことはどうでもいい。エルバードのため、死んでもらうぞ!」

宿敵を討ち果たしたバルソムの頬を涙が、流れ落ちる。
それは男爵の陰謀によって無念の最期をとげた男たちへの弔いだったのか。

男爵の死体からフラワルドの密書を発見した。

アトルシャン
「バルソムさん!これを…。」

バルソム
「こ、これは、魔軍への密書ではないか。ということは、フラワルドは魔軍の密偵だったということか。」


バルソム
「アトルシャン。ありがとう。おかげで男爵を討つことが出来た。だが、魔軍を倒すことは、我らの力だけでは無理だ。私と共に城へ赴き、王に助けを請うのだ。」

バギン
「確かに、主力をかいたとはいえ、エルバード軍の力なくして魔軍を倒すことはできぬからのう。」


【エルバード城】
大臣
「今回の功績をたたえて、王からお話があることでしょう。」

侍女
「王様に失礼のないように気をつけてください。」

女王
「王が、お話になることでしょう。」


「バギン、そしてバルソム並びに二名の者たち。今回の働きは誠に大義であった。特に、余の知らぬこととはいえ、バルソムには申し訳ないことをしたと思っておる。今更ではあるが、バルソムには近衛兵隊長として城に残ってもらいたい。」

バルソム
「勿体無いお言葉、有難うございます。」


「さて、バギン、アトルシャン、タムリンの三名についてじゃが、ハスラム、ファルナの両名と共にサダの砦へいき、魔王討伐隊として単独行動をとってもらいたい。詳しいことは砦の指揮官であるサダより説明があるだろう。ハスラムとファルナをこれへ。」

ハスラム
「ふっ、剣の腕なら誰にも負けないぜ。可愛いお嬢さん、ヨロシク。」

ファルナ
「もう、ハスラムったら。タムリン。この人には気をつけたほうがいいわよ。」


「まずはサダの砦に行き、隊長のサダと作戦を練ってくれ。」

バルソム
「王の警護は私に任せておいてくれ。」

大臣
「サダ司令官は、勇敢なる騎士であります。何卒、彼をお助けください。」

女王
「魔軍はいつ襲ってくるともわかりません。急ぎ、サダの砦へ向かわれるのがよろしいでしょう。」

侍女
「ファルナ様、体にはお気をつけてくださいませ。」



アトルシャン
「ハスラム王子、そしてファルナさん。足手まといになるかもしれませんが、よろしくお願いします。」

ハスラム
「ハスラムでいいよ、アトルシャン。エルバードを救うために共に戦おう。」
ファルナ
「私もファルナと呼んでね。女の子二人で仲良くしましょうね、タムリン。」

タムリン
「私のほうこそ。」

バギン
「これ、年寄りだと思って、わしだけのけ者にするんじゃない!」

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